蓄膿あれこれ

2006年1月23日
事の発端は、12月某日。

いつものように香水を付ける。
俺『・・・(あれ?においがしないなぁ〜香水古くなって匂い飛んだのかなぁ?)』
そのときは、まぁいいや、新しいヤツ買えば。とか思ってたんですよ。

それから一週間ほどしてようやく気付いた。
香水が飛んだのではない。俺の鼻が飛んだんだ。

そう俺は未曾有の嗅覚障害へ足を踏み入れてしまったのだ。
何もかもにおいがしない。屁もウンコも臭くない。
カレーや餃子すらにおいがしない。鼻が通っているにも関わらずだぞ!?

味はしょっぱい、すっぱい、辛い、甘いなどのレベルでは感じることが出来るが
風味がないというか、味気ないというか、味を深く感じることが出来ない。
困った、困った、と思いつつ病院に行くのがめんどくせえ・・・ということで
いつもの自然治癒にまかせほっといた。

ほっとくこと約1ヶ月。
一向に回復しないことを悟った

焦った俺は病院に行くことを決意。

1日目。
とある総合病院へ赴く。
その病院の受付は11:30までということを知ったのは12:30であった。
『早過ぎるぜベイベー!』と嘆きながら、翌日違う病院へのアタックを試みる。

2日目。
今度は総合病院ではなく、個人病院的な『○○耳鼻咽喉科医院』というところへ行く。
その病院の受付が木曜日に限り12:00で休診となることを知ったのは木曜日の12:30であった。
『コレは俺に対する医学界の挑戦なのか!?』と思いつつ、翌日のアタックへ執念を燃やす。

3日目。
俺は無事に○○耳鼻咽喉科医院に潜入することに成功した。
個人医院特有の狭い待合室(だが決して嫌な雰囲気ではない)で待っていると
『会長さ〜ん』とのお呼びが。俺は意を決して診察室へと飛び込んだ。

診察室にて俺と○○院長とが対峙する。
院長サイドには看護士が一人ついてはいるが、実質、一対一。サシ・・・というやつだ。
『・・・』『・・・』一体どれくらいの時間が経過しただろう。
永遠であるかのように沈黙が続く。
だがそれも今考えてみるとほんの5秒にも値しないほど短い時間だったかもしれない。

『・・・今日は』
!!
先を取ったのは院長であった。

院長(以下「院」『・・・今日はどうしました?』

 俺はその質問を身体全体で味わうように吟味し、言葉を極限まで選び返答する。

会長(以下「会」『えぇ、一ヶ月ほどにおいがしなくてですね。』

 院長の方はその台詞を聴き、ニカッと鼻に掛かるような意味深な笑みを浮かべた後
 待ってましたと言わんばかりに、こう切り返す。

院『そうですか。じゃぁちょっと鼻の中見せてくださいねぇ〜』

 俺の背中には戦慄が走り、その戦慄は電気信号となって脊椎を通り脳へと運ばれた。
 (もっとも、それは感じただけであって、生物学的には逆の経路であったのだろう。
  つまりは脳で感じ取った戦慄を脊椎を通し背中へと運ぶ動作。)
 俺の体が覚えた戦慄は不確かなものであったが、院長の次の行動で確かなものとなった。

院長はペンチのような金属の道具を取り出す。
いや、この場合『凶器』と書いて『ドーグ』と読むほうが正しいだろう。
その凶器(ドーグ)は、見るからに
『鼻の穴に先端を突っ込んで握るとパカッと先が開いて鼻穴の中を丸見えにしますよ〜』
という形状をしていた。
コレは以前、このブログで紹介した『ウニをパカッと開くやつ』と同じような構造である。

案の定、俺はこの凶器(ドーグ)によって鼻の穴を陵辱された。
まず突っ込まれ、拡げられ、覗かれ、など、とにかく俺は陵辱された。
陵辱だ。恥辱だ。侮辱だ。屈辱だ。

だが俺は、そんな中、抱いてしまったのである。あの感情を・・・。
陵辱されながらも、そう・・・、ああ・・気持ちいい・・・
俺は、鼻の穴を拡げられ、普段吸えないほどの空気を胸に吸いこみ、感じてしまったのである。
あまりの気持ちよさをっ!!

一連の陵辱劇が繰り広げられる中、院長は言った。言い放った。
まさにその一言は神をも恐れぬ、否、神ですら恐れおののき後ずさりをしてしまう程のものだった。

院『じゃぁ鼻の中に薬を吹き付けますよ〜』
会『?!』

拡げられ、陵辱されつくされたかと思われた鼻の中へ薬を噴霧する器具が差し込まれる。
その器具は棒状の金属であり、鈍く光り輝くその様はまさに死神の鎌なのであった。
いや、もはやロンギヌスの槍、龍槍スマウグですら凌駕するその姿は何物にも形容し難い。
そんなことを考えたその刹那。

しゅっ

俺は陵辱された上、ナカに出されてしまった。
・・・ 

その後、看護士に指示され鼻洗浄を行う手筈となった。
鼻洗浄とは片方の穴から生理食塩水を流し込み、逆の穴からそれを出す、という方式の洗浄である。
この時、俺は左の穴が詰まっていた。
普通に詰まってる感じじゃなくて、なんと言うか奥から塞き止められているような、鼻炎特有の詰まり方であった。

まず右から生理食塩水を流し込む。この時の俺の格好は90度のお辞儀スタイル。
しかし、左穴が詰まっていたため、鼻穴から出てくるはずの生理食塩水が全て口に流れてしまう。
口からエレエレと生理食塩水を吐き出す俺の姿を自分で客観的に想像し、笑ってしまう。
ぱっと隣を見ると、一緒になって看護士も多少笑んでいる。一種、友情のようなものが芽生えた。
まぁ普通に逆穴から出てきていても笑えるがな。

口から生理食塩水をエレエレ吐き出しながら『も゛〜い゛ぃですかね゛え?』
と聞く俺の姿は往々にして笑えたであろう。

そして次は逆。左穴から水を入れる。
この時、詰まっていた何かが流れるのを感じ、左穴が開通したことを確信する。
鼻洗浄はとっても気持ちよかったなぁ〜♪
・・・

次に通されたのがレントゲン室。顔のレントゲンを撮る。
レントゲン室は2畳ほどしかないような狭い空間であり、
なにやら胡散臭くきな臭い死臭でも漂っていそうな雰囲気であった。

だが俺はそもそも嗅覚障害の診断のため病院へ来ている。
そんな俺が死臭に気付くのは毛頭無理というものであった。
明るみには出なかったが、あの部屋ではきっとTウイルスの実験が・・・。げふんげふん。

看護士の説明によると副鼻腔のレントゲンを撮るのだという。
説明を終え、レントゲン室からそさくさと出て行く看護士の後ろ姿からは
『早く遠くまで逃げないと放射能をモロに喰らっちまう』という空気が出ているのを
俺は見逃さなかった。

一抹の不安を覚え、しばらく待っていると、
『では撮りますので息を止めてください。』と室内のスピーカーから鳴り響く。
そう、真打。院長のご登場である。
俺は言われるがまま息を止めその瞬間(とき)が来るのを成すすべなく待っていた。

『シュイーーーーン』

静寂の闇をつんざいたのはレントゲンマシンの作動するような音であった。
この極限の精神状態の中、嗅覚が封じられている俺は、耳・・・そう、聴覚が異常に研ぎ澄まされ
レントゲン室の別室=院長がいる部屋から漏れる、ある一つの音を捉えていた。

「キリッ・・・キリッ・・キリッ・・・キリッ・・」

まるで、何かツマミのような物、
そう・・・例えば、放出される放射能の量を決めるツマミのようなものをねじる音である。

む?!謀ったな!と思ったときには時既に遅し。
看護士の『はい、終わりで〜す』という声に迎えられ、診察室へと舞い戻った。
看護士の目が少し哀れみの眼差しになっていたような気がするのは思い過ごしだろうか?
なんというか、黒い雨でも浴びたかのような気分であった。

看護士は言った『今日は次で最後です。』
レントゲンの次は、薬を霧状にして吸い込むやつ(通称:吸引)である。
喘息の人がよく口で吸ってるやつの鼻バージョンとお考え下さい。
俺には『今日は次で最期です。』と聞こえたのだが、それが気がかりでならない。

5分かけて吸引を済ました後、院長に呼び出しを喰らう。
院長はレントゲン写真で俺のされこうべを見ながら、おもむろに語りだした。
俺は興味津々でレントゲン写真(己がされこうべ)を見つめながらカラ返事を繰り返した。

院『・・会長さん。ええとですね、蓄膿症です。』
会『・・・はぁ。(頭蓋骨ならレオ様にも優るとも劣らないイイ男だな、俺は。)
院『それで投薬治療で薬1週間分出しますから、これでやってみてください。』
会『・・・はぁ。(いや、まさか、頭蓋骨だけならデップにも勝てるのでは!?)

というわけで、俺は蓄膿症と診断されたのであった!!
近況は追って報告する・・・。いつかに未来に続く!
 
 
追伸:
この薬、一日目にして効いた。マジで。
院長に多大な感謝をする。本当にありがとう。本当にありがとうございました!
コーヒーがコーヒーのにおいしたのは本当に久しぶりだよ。
たかがインスタントコーヒーなのに・・・今までのコーヒー史上一番美味い!w

ま、院長よ、昨日の敵は今日の友ってヤツだよな!?笑
 
 

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